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法律家にならなくてよかった。 ~ 一太郎訴訟に思う ~

さまざまな話題を呼んでいる、「一太郎訴訟」。
江島さんのblog に、
共感できる憤りがかいてあったので、T/B.

私は、法学部に在籍したおり、法律に触れることにあった。
(大学5年になってまじめに働くことを考えねば、と思って、司法試験教材用のテープを
聴いて勉強しはじめた。
法律の勉強そのものは面白かったけど、
文言解釈をおぼえる試験勉強の世界より、
面白い世界を知ってしまってやめた。)

授業にはほとんど出たことがないので、偉そうなことはなにもいえないが、
何個か印象に残ったコマがある。

ひとつは、中里実教授の話。
儲かった後の節税に興味があった!(まず儲けんかい!という突っ込みはさておき)
私は彼の「租税回避」の授業にだけこまめに顔を出していた。

(東大教養の「知の技法」教授陣を皮肉るように)
「知」、フィロソフィーが万学の祖?、冗談いっちゃいけない、
すくなくとも、法学は違う。
法学の祖は、ギリシャやローマの町のおっちゃんおばちゃんたちだ。
市井の揉め事をよく観察して、そこからでてきた揉め事の処理方法が体系化し、
そこから法学(民事系)ができたんだ」

中里教授は、法律というより税法の実態にすごく精通していたのが印象できたった。
だから、比較的、地に足着いた論理を展開されていたのだと思う。

こういう、判決を見ていると、そういう原点がすごく忘れられているなあ、と思う。
法律という、砂上の論理の楼閣で閉じた世界で言葉遊びしているように見える。

法律が、学問として特殊なのは、結果としての妥当性から入る、というところだ。
その妥当性を導くために、既存の条文の文言解釈を広げたり狭めたりしながら、
論理っぽくしているのだ。
条文的には正しいが、社会通念や常識から照らしておかしい結論は、おかしいのだ。

そういう判断をおこなうためには、社会通念や常識がある必要がある。

世の中がシンプルな時代はよかった。
社会通念や常識がさすものが均一にとらえられていたからだ。

「人のものを盗むのはいけない」という常識はわかりやすい。
ものの定義は「形あるもの」とする、

これによると、財布を盗んだら罰せられる。
じゃあ、電気はどうか。人がお金はらっているものを取るのはわるいきがするけど、
電気に形はない。

そこで、ものの定義を、「管理可能なもの」はものである、と定義することで
電気泥棒を窃盗とした、、。

こういうのが、社会通念とか妥当性に基づく法律解釈、および結論というやつだ。

現在社会は複雑だ。(ああ、陳腐な言い回し!)
さまざまな業界があって、さまざまな業界の常識が存在する。
ソフトウェア業界の、製薬業界の、電機メーカーの、通信業界の、
常識が存在する、わけです。
それはだれかが神の啓示のようにきめるわけでなく、
政治的なやり取り含めながら合意形成されていくものだ。

その結果、へんな常識がまかり通っている業界もある。
たとえばプロ野球界なんかその例だ。
でも、原理原則でいうと、そういう業界はやはり淘汰されているので心配ない。
職業選択の自由が認められているので抜けることも可能だ。

ソフトウェアの権利侵害を判断するためには、まずソフトウェア業界コミュニティでの常識非常識を理解する必要がある。

そういった人間の中から、法律について明るい人をつくって、判断させたほうがいいような気がする。
もっといえば、業界ごとの自治のほうが、裁判所より権威を持たせたほうがいいのかもしれない、と思う。

そういうことを考えるに、法律家にならなくてよかった、と思う。
もし、法律家が本来果たすべき役割を果たしたかったら、ある業界なりある社会にまずはどっぷりとつかりこむことが大切だと思うからだ。

私は何の因果か、ゲーム業界にはじまって、ハイテク業界(ケータイ、ロボット、スーパーコンピュータ)にかかわりだしている。

22歳のとき、「ハイテク特許にかかわる弁護士になりたい」と志していたら、今頃大手の弁護士事務所にいって、
「きみ、ハイテクに関わりたかったでしょ、はい、松下がクライアントのソフトウェアの特許侵害訴訟、がんばってね」といわれて、「勝訴しました、これで私もハイテクのわかる弁護士。えっへん。」、、、。
そうならなくてよかった。そんなの、まったく技術のわかる弁護士でもなんでもないから。

もちろん、法律家の中でもすごく優秀な人がいて、業界の常識と妥当性に配慮しながら判断できると思う。

その場合、必要なのはハイブリッドであることだと思う。
ある業界に精通しつつ、法律実務にも精通する、ということだ。

そういう観点でみたとき、いまのロースクール制度は、実体面はともかく、大きな流れとしていい方向に行っていると思う。

日本にすこしでもまともな法律家がふえるように、私も何かできることからしていこうと思う。

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